14.麻酔が始まったら

 先ず、小さなUFOのような「聴診器」が胸に貼られ、麻酔科の先生が心臓の音を聞きます。これは麻酔中ずっと続けられ、お子様の心臓の働きがいつも手にとるようにわかるのです。この聴診器は、日頃診察で良く見かける両方の耳で聞くタイプではなく、片方の耳だけで聞くタイプですので麻酔の先生は心臓以外の他の音にもいつも注意が払えるようになっています。もし覚えていたら、麻酔の先生に自分の心臓の音を聞かせてもらいましょう。

 次に腕章のような「血圧計」が腕に巻かれます。そして、シュクシュクといった音と共に空気が送り込まれ少し腕が押される感じがする間に血圧が計られますのでこの間だけは腕を動かさないでじっとしていて下さい。

 次に胸にいくつかの小さなワッペンを貼りますが、これは心臓の働きを示す「心電図」を見るためのものです。そして最後に指先に赤い光を発する小さなプラスチックの指輪を貼り着けます。これは血液の中の酸素の状態を診断する装置で「パルスオキシメーター」と呼ばれ、麻酔中の患者さんが十分な酸素が受けられるよう見張りをするものです。

そしてこれは眠ってからですが、呼吸を見るカプノメーター、酸素や麻酔薬をみる濃度計、手術のやりやすさをみる筋弛緩モニター、麻酔の深さをみる脳波モニターなどがつけられて、安全な麻酔を助けます。

 ここまでの準備が終わると、麻酔の先生がお子様の口元に宇宙飛行士のマスクのようなものを持ってきます。このマスクには黒いもの、透明なもの、様々な色や形があるうえに、中からお子様の大好きな果物(バナナ・イチゴ・メロン)やアイスクリームの甘い香り、あるいはチューインガムのような香りの風が吹いてきます。こうした香りの風を口で大きく吹き返すように呼吸しているうちに段々と眠くなります。

 大きなお子様の場合には、静脈内注射や腰から薬を入れたりする脊椎麻酔や硬膜外麻酔と呼ばれる方法も行ないますが、こうした場合には予めお子様と話をしてから行ないます。もちろん麻酔科ですから、こうした注射の場合にも痛みを少なくする配慮は忘れませんからご安心下さい。

 お子様が眠ってからも麻酔科医の仕事は続き、血圧や脈拍以外にもお子様の体温、呼吸その他ここには書ききれない程の沢山のことに注意し続け、安全に手術が進行します。眠っているうちに手術は終わりますので、痛いこともありませんし、何も覚えていません。
 楽しい夢を見ている間に手術が終わってしまうこともあります。どんな長い手術でも、お子様にとっては短い手術と同じにほんの一瞬の出来事に感じられます。

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