会長挨拶
日本小児麻酔学会第12回大会を,徳島大学大学院侵襲病態制御医学分野(旧麻酔学)の主催のもと,徳島市において開催できますことは,私達にとって誠に光栄でございます。
私自身,小児麻酔を専門としておりませんが,保険会社の話として漏れ聞くところによりますと,麻酔に関連した医事紛争の中では小児麻酔における紛争が非常に多いということであります。このことは,麻酔専門医の資格を取得するまでの5年間に,小児麻酔の経験の少ない麻酔科医がいかに多いかということを示しており,今後,小児麻酔学会の果たすべき役割は非常に重要と考えています。
「小児は小さな成人ではない」とはよく言われる言葉です。小児麻酔は,小児の解剖学的,生理学的,薬理学的特徴をよく理解した上で慎重に行う必要があります。小児麻酔を専門とされる麻酔科医は,神経をすり減らし,小児における薬物の臨床適用という縛りの中で日々努力されていますが,その努力に対して報われることはほとんどなかったと思います。この点に関して,小児麻酔学会では,小児麻酔における診療報酬の改善を厚労省に働きかけてこられ,ようやく今年の春,回答が得られました。本学会では,シンポジウム1「小児麻酔と診療報酬」と題して,どのように改善されたのか報告していただきます。
シンポジウム2では,「小児麻酔における輸血拒否」と題して,両親がエホバの証人の信者の場合,判断能力のない小児の輸血を拒否することができるのかどうか,麻酔科医,ものみの塔の代表者,そして法律の専門家を交えて討論していただきます。まだ予定の段階ではありますが,シンポジウム2は,広く一般市民とも意見を交換したいという前川信博座長および私の希望から,市民公開講座として開催するかもしれません。
その他,本学会の特徴としましては,一例報告を大切にしたいという私の考えから,5〜6題の症例報告を約2時間かけて徹底的に討論していただきます。これは,昨年の麻酔科学会で,前川信博先生と私とで司会をしました「症例から学ぶ麻酔科医の臨床―徹底討論:何を言っても委員会―」が非常に好評であったため,2匹目のドジョウを狙った企画でもあります。また,8月8日(金)の会員懇親会は「阿波踊りワークショップ」と題しまして,阿波踊りの有名連と一緒に踊り狂おうと考えています。
学術講演としましては,岩井誠三記念講演として,厚生省脳死判定基準の作成に深く関与された武下浩先生に「小児脳死の課題」と題して講演していただきます。特別講演としては,「胎児蘇生」,「小児麻酔に関する小児外科医からの提言」「活性酸素と生物の生存戦略:生物進化から生性老病死を診る」という演題で各分野におけるご高名な先生方に講演していただきます。とくに,活性酸素の講演をお願いした井上正康先生は,私が昨年の学会のイブニングセミナーで司会を担当したとき,格調高い講演内容をまるで落語を聞かせるかのごとく面白く話され,会場全体が笑いの渦に包まれました。直ちにその場で今回の講演をお願いした次第です。教育講演としては,「小児麻酔における経食道心エコーの功罪」「Pediatric Advanced Life Support (PALS)」という演題で講演していただきます。
以上,一つ一つをみると興味深い講演,シンポジウムを企画することができたと思いますが,悲しいことに私自身が小児麻酔を専門としていないため,学会全体を通して気の利いたメインテーマを思い浮かびませんでした。内容的には,楽しくてためになる小児麻酔学会ということになると思います。台風が来ないことを祈りつつ,多くの先生方の参加をお待ちしております 。
2006年7月
日本小児麻酔学会第12回大会
会 長 大下 修造